シックハウスの対策のための24時間換気の義務化は、窓による換気から機械による換気へ、日本の住宅に大きな変化をもたらした。一方、省エネ対策の一環として、住宅の高断熱・高気密への関心は高まり続けている。今や換気・断熱・気密の3つの要素は、住宅を建てるうえで必ず検討するものとなっている。
 しかし、これらは目に見えるものではないため、実際にはいいかげんな設計・施工でも気が付かずに住宅が
ユーザーの手に渡ってしまっているのが現状だ。筆者は、ユーザーに健康・快適・省エネの3つの性能を約束し、理解してもらうために全棟で引渡し前に3つの測定を行っている。以下に、それらの測定方法をはじめ、測定目標値とその効果について解説する。

 1つめは、室内空気質測定である。ここでいう室内空気質とは、ホルムアルデヒドとVOC濃度のことをいう。

測定方法には、主に@手動検知管測定法、Aポンプ式検知管測定法、Bバッジ式24時間測定法、Cポンプ式捕集管測定法、の4つがある(表1、写真1〜4)。現在最も一般的なのは、Bだと思われる。機器が不要で、分析結果を書類でもらえるので、ユーザーに提示する際の信頼性が高い。当社ではBに加えて、自社で行えるAを併用している。ただし、AのデータはBに比べて検知レベルが低いので研究や実験のデータとしては使えない。(表2)

▲写真1 手動式検知管測定器(ガステック)。局部の測定に活用。

Cは、アルデヒド類とVOC50品目を検知できる。しかし、1階と2階の2ケ所を測定すると、分析費だけで8万円、機器のリースや測定専門家の出張費などを入れると15〜25万円程度かかってしまう。測定方法を勉強して、測定は自分で行うことを勧める。筆者はデータを採るなどの研究用に活用している。

←写真4 ポンプ式検知管測定器。ホルムアルデヒドとトルエンの測定が行える。

▲写真2 バッジ式24時間測定は、測定機器は不要。写真はダイヤ分析センターのもの。

▲写真3 ポンプ式捕集管測定器。
50品目のVOCを検知する。

表1 4つの室内空気質測定方法

測定法

検知範囲

捕集方法

検知物質

機器コスト

測定コスト

コメント

手動検知管測定法

0.05

1.0ppm

手動で5回
引く

ホルムアルデヒド

17,000円
程度

検知管
170円/1本

収納内部などの局所的な測定に活用。基準値を確認するにはふさわしくない。

ポンプ式検知管測定法

0.02

0.2ppm

30分ポンプ
捕集

ホルムアルデヒド
トルエン

10万円
程度

検知管
250円/1本

検知範囲が広く、読取りに主観を入れがち。何回か使って経験を積むとよい。

バッジ式24時間測定法(パッシブ法)

0.01ppm

24時間放置

ホルムアルデヒド
アセトアルデヒド
トルエン
キシレン
エチルベンゼン
スチレン

必要なし

7,500円/個
(分析費含む)
※10個まとめると20%割引

一般的。バッジを添付すると、分析機関から書類で結果が送られてくる。

ポンプ式捕集管測定法
(アクティブ法)


0.0001
ppm

30分ポンプ
捕集

ホルムアルデヒド
アセトアルデヒド
トルエン
キシレン
エチルベンゼン
スチレン
ほか50品目

リース代

アルデヒド類:15,000円
VOC類:
25,000円
(両方とも分析費のみ)

コストが高い。多くの化学物質を検知するため、測定の知識が必要。データ採取など研究や実験に活用。

表2 測定方法によるホルムアルデヒド検知の比較
  ポンプ式検知管測定法 バッジ式24時間測定法 ポンプ式捕集管測定法
1階リビング 0.04 0.02 0.014
2階洋間 0.04 0.02 0.019

 測定場所については、AとBの場合をまとめる。当社ではさまざまな対策により、基準値を大きく下まわり、ほぼ同じ数値が出るようになったため、現在は1階のみを測定している。場所は、リビングの中心で、高さは天井高の2分の1程度が適当だと思われる。給気口に近すぎないところで実施するようにしたい。また、水廻りなど特に濃度が高いことが予想されるところを測ってみるのもよいだろう。

 測定する前に、すべての窓、扉(屋内の扉や造付け家具、押入れなどの収納部分の扉も含む)を30分間開放し、その後、屋外に面する扉を5時間閉鎖する。(屋内の扉や造付け家具、押入れなどの収納部分の扉は開放)。
 測定中は、必ず換気を稼動させて状態にする。換気の有無で濃度は随分変わってくる。(表3)

表3 換気の有無によるホルムアルデヒド濃度(ppm)
  標準測定 30時間換気を停止した後の測定
1階リビング 0.014 0.044
2階洋間 0.019 0.044

2つ目は、住宅の隙間面積の測定である。ここでいう隙間とは、外部に面しているもので外壁と天井が対象になる。この隙間面積(cu)を、延床面積(u)で割ったものを相当隙間面積(C値)といい、住宅の気密性を知るための目安となっている。C値は、0に近付くほど気密が高いことを表す。
 次世代省エネ基準では、温暖地のC値は5.0cu/u以下、寒冷地では2.0cu/u以下と定めているが、筆者は、0.5cu/u以下を目指して施工し、木材の経年変化を考慮してユーザーには0.7cu/uを約束している。なぜなら、表4で示したように、たとえば3.0cu/uの住宅では、冬季に風速3メートル/秒の風が吹いた日は、隙間自然換気0.3回/時に相当する。これに改正建築基準法で義務付けられた機械換気の0.5回/時と合わせると外気が室内温度に及ぼす影響が大きくなる。せめてC値1.0cu/u以下にしたいところだ。

表4 冬季(内外温度差20℃)の隙間自然換気量(回/時)

C値(cu/u)

無風状態 風速3m/秒 風速6m/秒
5.0 0.33 0.5 1.25
3.0 0.2 0.3 0.75
1.0 0.066 0.1 0.25
0.7 0.046 0.07 0.175
0.5 0.033 0.05 0.125

注) 風速3m/秒とは、顔に風を感じる、木の葉が動く程度。風速6m/秒とは、砂ぼこりが立ち、小枝が動く程度(理科年表、気象庁風力段級表より)

 測定方法については間違いのない測定装置を使い、できれば専門家に託すのがよいだろう。(写真5)。出張測定費は3万5千〜5万円程度である。
 注意しなければいけないのは、測定時の建物条件である。できるだけ使用時の状態に近づけて測定したい。キッチンやトイレ、浴室の局部換気扇、エアコンのドレーンの配管などは、測定時に特に目張りしないようにする。
 また、測定を始めたばかりの方は、施工中に小さく煙が出るものを使って、どこに隙間があるかを探し出すのもよいだろう。気密化は正しく換気するための手段といわれ、換気が義務付けられている以上は、住宅に必要な性能なのである。

▲写真5 気密測定機器と整流筒。測定は専門家に依頼するのがよい。

最後は、換気風量測定である。はじめに設計換気量を算出し、実際に排気風量を測定することで正しく換気されているかを確認する。

ここでは、C値1.0cu/u以下の木造2階建住宅でセントラル換気システム(3種換気)を採用した場合を例に解説する。まずは、その住宅に必要な総換気量を算定する。(図1)。次に、排気口(グリル)による排気量を設定する。C値1.0cu/u以下の住宅では、総排気量と総給気量は同量だと仮定できるため、図2で示すように通過風量も推定していく。

図1 筆者の使っている換気システム計算書

1.床面積からの換気量算定
面積算定 1階床面積 63.76u
2階床面積 55.48u
ロフト階床面積 8.9u
吹抜け面積 1.45u
合計面積 129.59u
体積算定

129.59u

×

2.4m

311.0163
0.5回換気量

311.0163

×

0.5回/時

155.5083/時 
2.家族人数での換気量算定
一人あたり30㎥/時として

4人

×

303

    1203/時 
3.総換気量設定

A>Bの場合:AとBの平均値で設定

137.7543/時
4.吸込みグリルの換気量設定
浴室

263/時

×

1ヶ所

26
トイレ(1・2階) 153/時 ×

2ヶ所

30
台所 153/時 ×

2ヶ所

30
収納 3/時 ×

4ヶ所

36
ロフト 3/時 ×

2ヶ所

18

総換気量

1403/時
5.自然給気口数の決定
1ヶ所の給気量を25㎥として、

1403/時

÷

253/時

5.6ケ所以上
その時の給気量

1403/時

÷

7ヶ所

203/時

図2 通過風量の推定

 各排気口の排気量を設定した後、排気口1つ1つに対して、風量測定を行う。測定は1人でも使える測定器を使用している。(写真6)。
 はじめに風量を調整するための絞込みを開放状態にして測定する。これをできるだけ設計風量値に近づけるよう、部分的に絞り込んで調整していく。弱中強の調整法であれば、弱または中にするのがよいだろう。換気風量に余裕があると、将来風量を調整しやすく、経年変化によって風量が落ちてきたときに対応できる。

▲写真6 排気口に測定器を当てて、風力量を測る。設定量でなければ、適宜調整する。

このように徹底して換気設計を行っても、システムの電源を切られてしまっては意味がない。設計時に換気システムのスイッチは止められないものとし、排気口や給気口のメンテナンスの指導もつくり手側が行いたいものである。