ご新居が完成してから約2年ほどが経過し、設計当時のご要望と、設計担当者としての思いとを照らし合わせながら、実際にお住まいいただいてからのご感想、思い出などをお聞かせいただきました。

デザイン性を重視したエントランス

『アルコーブ』
 ご主人様と奥様にお出迎えいただき、ポーチから玄関に入ると、天井のダウンライトに照らし出されたレンガ調タイルのアルコーブがあります。
 通常アルコーブというと絵画を飾ったりすることが多いのですが、レンガ調タイルの壁面そのものを主役としました。
「“玄関にはニッチ”というお宅が多いので、このアルコーブはご近所の方にも評判なんですよ。」と奥様もとても気に入って下さっているご様子でした。

↑観葉植物をアルコーブの下に飾って楽しまれています。ポトスは奥様が挿し木して育てられたもの。壁面とグリーンの色合いがマッチしています。

↑アルコーブ断面図
部屋や廊下などの壁面の一部を後退させて造ったくぼみ状の部分のことをアルコーブといいます。

『階段横のニッチ』
 階段横のニッチは、金魚の水槽を置けるように、充分な奥行きとしました。左奥のへこみに設置されている間接照明のライトにより、水槽が優しい光でライトアップされ、階段をほんのりと明るく照らし出します。

手前のキューブにはサンタクロースの置物がありました。奥様が季節ごとにセンスよく小物を飾っておられます。

「ニッチのへこみには金魚のエサも置いておけるんですよ。」
 ニッチのちょうど下の空間は、奥様のご要望により、裏側の和室の側から収納としても利用できるようになっています。少しの空間も有効に利用できるように、工夫させていただきました。

生活導線に配慮して

『コート掛けのアイディア』
 玄関アルコーブのすぐそば、リビング入口のとなりには、コート掛けをかねた収納スペースがあります。コート掛けというと、通常は左右横方向にパイプを通します。しかし、奥行き約45センチの空間という限られたスペース、洋服の肩口がぶつかってしまうよりは、ゆったりと使いたい・・・。

「前後方向に、縦にパイプを通しては…?」という大胆なアイディアは奥様からご提案されたものでした。
「常時たくさんの洋服を掛けておくわけではないし、ハンガーは家族1人あたり2つまでと決めているんです。(笑) 買い物をしたあとの紙袋や、つくりかけの編み物なんかもちょっとしまっておけますしね。」

 右側の壁面には、奥様が百円均一ショップで買われたというカバン掛けも取り付けられ、玄関周りの使い勝手はとてもよいとのことでした。
 ただ、収納の扉をあけると、廊下の照明の陰になってしまうので、中が少し暗くなってしまうかな・・・とのこと、設計時の配慮が大事であると感じました。

↑コート掛けアイディア

『リビング裏の収納スペース』
玄関脇のコート掛けのとなりには、可動棚の収納スペースが配置されています。
奥行きの寸法については、奥様が「りんご箱も入る奥行きにしたい」とご要望され、約45センチとしました。ホットプレートやカセットコンロ、クーラーボックスなど、それほど頻繁に使わないけれど、身近に置いておきたいものを収納するスペースとして、またパントリーとして整頓して活用されています。
二つの収納を配置したことで、リビングは約0.8帖分狭くなっていますが、リビングを広くとるのと、収納を確保したことと、どちらがよかったですか、と奥様にお聞きしたところ、
「生活しているとどうしても収納は必要だし、このスペースがあると物がすっきりと片付くからとても便利ですね。リビングには吹抜けがあるし、狭くは感じませんよ。」とお話しいただきました。

        ↑1階平面図
ロフトってどうですか?

『息子さんのお部屋』
2階の洋室は、息子さんが使用されているプライベートルームです。
「斜め天井が広がっているので、とても開放感があって、快適ですよ。」
 基本計画当初、2階には、洋室と主寝室(書斎) の両方から出入りできるクローゼットを提案させていただきましたが、息子さんの部屋を広くとるためにプランを変更しました。
 また、FP遮断パネルを屋根全面に使用して4帖半2つ分のロフトを確保し、耐震強度を上げる取り組みも行っています。

↑2階床梁


    2階床伏図(概略図)→
水色に塗られた部分は、補強の為にもう一本梁を抱かせている部分
です。
また、赤い×印は、階下に柱が2本並んでいることを示しています。

 『成長する家』ではロフトを配置したプランをご提案することが多くなってきていますので、ロフトを実際にお使いいただいての感想をお聞きすると、
「使用頻度の低いものはロフトに置いておけるので、部屋自体の片付けが簡単でいいですね。ロフトへ上るハシゴも、必要な時にかけるようにしています。」
 ロフトのハシゴの設置場所については、奥様と息子さんのお2人にも設計図面に三角スケールをあてていただきながら決定。ハシゴの向きを工夫することで、造り付けの机のスペースも確保できました。
 積極的に設計打合せにご参加されたことで、よい結果が生まれた例のひとつです。

『思い出の品がつまったロフト』
となりの主寝室のロフトには、本やアルバム、ベビー服など、大事な思い出の品をしまっておられます。
「捨てることができない大事なものばかりです。でもスペースはまだまだあるから、これからも物が増えても大丈夫。」
これからのご家族の歴史とともに、いくつもの思い出の品がおかれていくことでしょう。

↑ロフトご提案スケッチ
おわりに

 リビングで楽しくお話を伺いながら、ご主人様ご自慢のステレオで、お気に入りのジャズシンガー・鈴木重子さんの歌声を聞かせていただきました。
「リビングの上がちょうど吹抜けなので、音の響きがとてもいい。仕様打合せに充分時間をとってもらってよかった。」と、ご感想をお話しくださいました。
 音楽をこよなく愛されるもの静かなご主人様と、以前は設計図面のトレースのお仕事をされたこともあるという奥様は、設計時、そして建築中も毎日現場観察日記を綴られるほど、思いを込めて家づくりに取り組まれました。
 今回もひとつひとつお話を伺ううち、『家』への愛情、大切に住んでいただいている気持ちが強く感じられ、家づくりのお手伝いができたことをあらためて誇りに思いました。素敵な時間をありがとうございました。


設計がスタートしてから、工事の期間中、そして建物が完成するまで、毎日休むことなく奥様がつけられた『現場観察日記』をホームページでご覧いただけます。